禁断の科学裁判
−−−ナウシカの腐海の森は防げるだろうか−−−
裁判に係わった理由(原告代理人の一人として)
安藤雅樹(本訴原告代理人。事務所は長野県松本市)
12.28.2005
私は信州の松本で、町医者的ないわゆる町弁として生活している弁護士です。
平成17年初め、私はある機会を得て、横浜港で輸入食品が詰まった青い樽の山を見学しました。この樽には、ワラビやカンピョウなど、様々な輸入食品がぎゅうぎゅうに詰められ、これが吹きさらしの中野積みされ「保管」されていました。
このような食品を食べている私たちの生活は果たして大丈夫なのか、何か歪んでいないか、そう感じたことが「食の安全」に興味を持ったきっかけです。自然の摂理に反して、遠い外国から長い月日をかけて運んできた「食品」が安全であるはずがない、そう感じました。
いま、政府により、遺伝子組換え技術が、世界を救う技術であるかのように宣伝されています。しかし、このような自然の摂理に反する技術が、果たして安全と言えるでしょうか。私は「自然の摂理に反する」単純にこの一点から、安全性については疑問を抱かざるを得ません。
この遺伝子組換えが、とうとう我々日本で生活する者の多くが毎日食しているコメにまで及んできました。これまで室内実験にとどまっていた実験が、十分な検証がなされないまま野外実験へと移行しています。この野外実験に危険はないのでしょうか。原告を初めとする市民は危惧感を覚えていますが、私はこれは当然のことと考えます。
行政は時として暴走します。これをチェックする機関として憲法上設けられているのが司法(裁判所)です。上記の危惧感を司法の言葉に翻訳し、裁判所の判断を仰ぐのが弁護士の役目であると考えます。
私は、普段は破産や離婚、相続、賃貸借の問題、消費者問題、刑事事件など一般市民生活で起きる多種様々なトラブルを解決するための仕事をしていますが、本件は「食」という人間の根源、ひいては人間の生命に関わるという点で、もっとも深刻な「トラブル」を巡る問題です。
この行政の暴走がもたらしたトラブルについて、司法が全く歯止めをかけられないとしたら、司法は信頼を失い、また存在価値を失うことになりかねません。司法の場の翻訳者である弁護士としても放置できないトラブルであると考えます。
裁判所がこの「トラブル」に適切な判断ができるように、皆さんの危惧感を吸い上げ翻訳できるよう、原告代理人の一人として微力ながら努力したいと思います。