禁断の科学裁判
 
−−−ナウシカの腐海の森は防げるだろうか−−−

「ディフェンシン耐性菌を探して」1 (柳原敏夫。1.27.2006)

発端 歌手の加藤登紀子さんが、今回のGMイネ裁判の原告となった。原告を決断するのに話を聞いてものの5分とかからなった。直感がまたたくまに勝利を占めたのだ。
しかし、そのあと、自分の直感の正しさを確かめるため、彼女はディフェンシン耐性菌の正体を探る行動に出た。専門家に自分の疑問、不明をぶつける勉強会の開催である。それは、GMイネの栽培によるディフェンシン耐性菌探求の旅である。

私は、たまたま、その第1回勉強会に参加する機会を得て、これは、ちょうど、俳優アル・パチーが監督・主演をした傑作ドキュメンタリー「リチャードを探して」(1996年)ではないかと思った。
なぜなら、アル・パチーノと加藤登紀子さんは、
1、アル・パチーノは「シェイクスピアを皆で考えるのが私の長年の夢だった」が、加藤登紀子さんもまた、「耐性菌のことを皆で考えるのが私の長年の夢だった」
2、ところで、世間の人に「リチャードV世を知っているか?」−−誰も知らない。
 世間の人に「ディフェンシン耐性菌を知っているか?」−−誰も知らない。
3、アル・パチーノ曰く「リチャードV世は複雑すぎて、やめてしまいたくなる」。恐らく、加藤登紀子さんも「ディフェンシン耐性菌は複雑すぎて、やめてしまいたくなる」だろう。
4、そこで、アル・パチーノは「「リチャードV世をあらゆる角度から我々なりに分析することにした」が、加藤登紀子さんもまた、「耐性菌のことをあらゆる角度から我々なりに分析することにした」

また、リチャードV世とディフェンシン耐性菌は、
1、【第一幕 第一場】 冒頭のシーン。リチャード登場、独白。
今や、我らが不満の冬も去り、
ようやく、栄光の夏が来た。
  
 【第一幕 第一場】冒頭のシーン。ディフェンシン耐性菌登場、独白。
今や、我らが不満の冬も去り、
ようやく、栄光の夏が来た。

2、【第一幕 第一場】続き。リチャードの独白。
ヨークの太陽(サン=息子)によって、我が一族をおおっていた黒雲も、
今や大海の底深くに飲み込まれた。

【第一幕 第一場】続き。ディフェンシン耐性菌の独白。
センターの太陽(サン=息子)によって、我が一族をおおっていた黒雲も、
今や水田の底深くに飲み込まれた。

3、リチャードV世の作品解説によると、
野心家リチャードは、兄の王が病に倒れると、その明晰な知能と冷徹な論理で次々と残忍な陰謀をくわだて、遂に王位につく−−。魔性の君主リチャードを中心に、ヨーク家の内紛をたどり、口を開いた人間性のおそろしい深淵に、劇詩人シェイクスピアが真っ向から対決した傑作史劇。

同じく、ディフェンシン耐性菌の解説によると、
野心家ディフェンシン耐性菌は、兄の病原菌がディフェンシンにより病に倒れると、その明晰な知能と冷徹な論理で次々と残忍な陰謀をくわだて、遂に病原菌の王位につく−−。魔性の君主ディフェンシン耐性菌を中心に、病原菌の内紛をたどり、我々の人工的操作により口を開いた自然性のおそろしい深淵に、歌姫加藤登紀子が真っ向から対決した傑作科学ドキュメント。

以下は、加藤さんの「ディフェンシン耐性菌を探して」の取材記録である。


第1回勉強会 日時:
2006年1月27日(金)午後3時から都内で開催。
講師: 元東京工業大学大学院教授の金川貴博さん。
参加者: 原告のちばてつやさん。新潟県上越市から原告の天明伸浩さん。原告代理人の神山美智子さんほか合計11名。
内容: テキスト「抗菌タンパク質を作る組換えイネがもたらす大きな危険性−−人類の滅亡にもつながりかねない耐性菌の問題−−

光景: 勉強会のあとの記念撮影(加藤さん、ちばさん、金川さん)。

感想: 加藤登紀子さんが、テキストの次のくだり、
「マウスは、小腸の上皮細胞からディフェンシン前駆体を分泌し、病原菌が来ると、ディフェンシン前駆体の一部を切り取って、抗菌力のあるディフェンシンを作って、これで病原菌を攻撃して身を守る」(1頁)
に目をつけ、もう少し詳しく解説してくれた金川さんの次の説明、、
「普段はディフェンシンを作らないで、それと似て非なるディフェンシン前駆体を用意していて、病原菌が来るや、ディフェンシンに変身して敵をやっつけるのです。
さもないと、普段からディフェンシンを作っていると、敵も学習して、負けないように変身してしまうので、敵に学習させないために似て非なる状態で待機しているのです」
を聞いて、「う〜ん、凄いよね、それ」としきりに感心。

これを聞いた私、そんなところに目をつける加藤さんの眼力に「う〜ん、凄いよね、それ」としきりに感心。

しかし、もう少し考えると、このディフェンシンというやつは、いったい、「情報公開して敵に学習させてはヤバイ。情報非公開で、敵をバッサリ仕留める」なんてことを、いつ、どうやって学んだろうか。少なくとも、オレ(の脳)は自分のディフェンシンにそんなことを教えた覚えはない。
昔、人体は脳が人間の最高の司令部で、そこから人体の各部に指令を出しているというような仕組みを教わったことがあったが、あれは結構、インチキなのではないか。少なくとも、オレの脳は、ディフェンシンに指令出した覚えもない。生命のカラクリは、脳だけが中央集権的に偉そうに振舞うのではなくて、実はもっと現場の連中が独自の判断で、どんどん動いているのではないか。自律分散型こそ生命のイメージに近いのではないか。


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