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   遺伝子組換え生物等の第一種使用等による生物多様性影響評価実施要領 (平成15年財務・文部科学・厚生労働・農林水産・経済産業・環境省告示第2号)

第一 趣旨
 本要領は、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(以下「法」という。)
第四条第二項の規定に基づき同条第一項の承認を受けようとする者が行う生物多様性影響の評価が、科学的かつ適正に行われ、またその結果を記載した生物多様性影響評価書が適正に作成されるよう、必要な事項を定めるものである。
 本要領は、遺伝子組換え生物等の使用等により生ずる生物多様性影響に関する今後の科学的知見の充実又は当該生物多様性影響の評価に関する国際的動向等を踏まえ、必要に応じて見直しを行う。
第二 生物多様性影響の評価に必要とされる情報
 生物多様性影響の評価は、
別表第一に掲げられた情報を収集した上で、これらの情報を用いて行う。ただし、同表に掲げられた情報の一部を用いる必要がないと考える合理的な理由がある場合には、それらの情報を収集しなくてもよい。
 また、別表第三に定める生物多様性影響の評価の手順に沿って評価を行う際、別表第一に掲げる情報以外の情報を収集する必要が生じた場合には、当該情報を追加して収集した上で、評価を行う。
第三 生物多様性影響の評価の項目及び手順
 生物多様性影響の評価は、
別表第二の上欄に掲げる遺伝子組換え生物等の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる評価の項目ごとに、別表第三に定める生物多様性影響の評価の手順に沿って行い、その評価の結果を踏まえ、生物多様性影響が生ずるおそれがあるか否かを総合的に判断する。
第四 生物多様性影響評価書の記載
 生物多様性影響評価書は、
別表第四に定める項目に沿って記載する。
別表第一(第二関係)
1 宿主(法第二条第二項第一号に掲げる技術の利用により得られた核酸又はその複製物が移入される生物をいう。以下同じ。)又は宿主の属する分類学上の種に関する情報
 (1) 分類学上の位置付け及び自然環境における分布状況
 (2) 使用等の歴史及び現状
 (3) 生理学的及び生態学的特性
  イ 基本的特性
  ロ 生息又は生育可能な環境の条件
  ハ 捕食性又は寄生性
  ニ 繁殖又は増殖の様式
  ホ 病原性
  ヘ 有害物質の産生性
  ト その他の情報
2 遺伝子組換え生物等の調製等に関する情報
 (1) 供与核酸(法第二条第二項第一号に掲げる技術の利用により得られた核酸又はその複製物のうち、移入された宿主内でその全部又は一部を複製させるもの(以下「ベクター」という。)以外のものをいう。以下同じ。)に関する情報
  イ 構成及び構成要素の由来
  ロ 構成要素の機能
 (2) ベクターに関する情報
  イ 名称及び由来
  ロ 特性
 (3) 遺伝子組換え生物等の調製方法
  イ 宿主内に移入された核酸全体の構成
  ロ 宿主内に移入された核酸の移入方法
  ハ 遺伝子組換え生物等の育成の経過
 (4) 細胞内に移入した核酸の存在状態及び当該核酸による形質発現の安定性
 (5) 遺伝子組換え生物等の検出及び識別の方法並びにそれらの感度及び信頼性
 (6) 宿主又は宿主の属する分類学上の種との相違
3 遺伝子組換え生物等の使用等に関する情報
 (1) 使用等の内容
 (2) 使用等の方法
 (3) 承認を受けようとする者による第一種使用等の開始後における情報収集の方法
 (4) 生物多様性影響が生ずるおそれのある場合における生物多様性影響を防止するための措置
 (5) 実験室等での使用等又は第一種使用等が予定されている環境と類似の環境での使用等(原則として遺伝子組換え生物等の生活環又は世代時間に相応する適当な期間行われるものをいう。)の結果
 (6) 国外における使用等に関する情報
別表第二(第三関係)
遺伝子組換え生物等の区分 評価の項目(生物多様性影響を生じさせる可能性のある遺伝子組換え生物等の性質)
植物(植物界に属する生物及び菌界に属する生物のうちきのこ類をいう) 競合における優位性(野生植物と栄養分、日照、生育場所等の資源を巡って競合し、それらの生育に支障を及ぼす性質)
有害物質の産生性(野生動植物又は微生物(以下「野生動植物等」という。)の生息又は生育に支障を及ぼす物質を産生する性質)
交雑性(近縁の野生植物と交雑し、法が対象とする技術により移入された核酸をそれらに伝達する性質)
その他の性質(右に掲げる性質以外の性質であって、生態系の基盤を改変させることを通じて間接的に野生動植物等に影響を与える性質等生物多様性影響の評価を行うことが適切であると考えられるもの)
動物(動物界に属する生物をいう。) 競合における優位性(野生動物と食物、営巣場所、生息場所等の資源を巡って競合し、それらの生息に支障を及ぼす性質)
捕食性又は寄生性(野生動植物等を捕食し、又は野生動植物に寄生することにより野生動植物の生息又は生育に支障を及ぼす性質)
有害物質の産生性(野生動植物等の生息又は生育に支障を及ぼす物質を産生する性質)
交雑性(近縁の野生動物と交雑し、法が対象とする技術により移入された核酸をそれらに伝達する性質)
その他の性質(右に掲げる性質以外の性質であって、生態系の基盤を改変させることを通じて間接的に野生動植物等に影響を与える性質等生物多様性影響の評価を行うことが適切であると考えられるもの)
微生物(菌界に属する生物(きのこ類を除く。)、原生生物界に属する生物、原核生物界に属する生物、ウイルス及びウイロイドをいう。) 他の微生物を減少させる性質(競合、有害物質の産生等により他の微生物を減少させる性質)
病原性(野生動植物に感染し、それらの野生動植物の生息又は生育に支障を及ぼす性質)
有害物質の産生性(野生動植物の生息又は生育に支障を及ぼす物質を産生する性質)
核酸を水平伝達する性質(法が対象とする技術により移入された核酸を野生動植物又は他の微生物に伝達する性質)
その他の性質(右に掲げる性質以外の性質であって、生態系の基盤を変化させることを通じて間接的に野生動植物等に影響を与える性質等生物多様性影響の評価を行うことが適切であると考えられるもの)


別表第三(第三関係)
生物多様性影響の評価の手順 評価の実施の方法
一 影響を受ける可能性のある野生動植物等の特定  別表第二の下欄に掲げられた評価の項目である遺伝子組換え生物等の性質により影響を受けると考えられる野生動植物等の種類を、分類学上の種その他の属性により特定する。
  なお、当該野生動植物等の種類の数が多数に上る場合は、それらの種の生育又は生息環境、当該第一種使用等に係る遺伝子組換え生物等が産生する有害物質への 感受性、当該遺伝子組換え生物等との近縁性等を勘案し、二から四までに定められた評価等を行う対象とすることが適当であると考えられる野生動植物等の種を 選定することができる。
 ただし、その宿主又は宿主の属する分類学上の種について我が国での長期間の使用等の経験のある遺伝子組換え生物等に関しては、別表第二の下欄に掲げられた評価の項目である遺伝子組換え生物等の性質のすべてについて当該遺伝子組換え生物等と宿主又は宿主の属する分類学上の種との間で異なるところがない場合には、影響を受ける可能性のある野生動植物等を特定しなくてもよい。
二 影響の具体的内容の評価  一で特定又は選定された野生動植物等が遺伝子組換え生物等から受ける影響の具体的内容について、当該野生動植物等の個体の反応についての実験を行うこと、関連する情報を収集すること等により評価する。
三 影響の生じやすさの評価  第一種使用規程に従って第一種使用等をした場合に、一で特定又は選定された野生動植物等が遺伝子組換え生物等から受ける影響の生じやすさについて、当該野生動植物等の生息又は生育する場所又は時期その他の関連する情報を収集することにより評価する。
四 生物多様性影響が生 ずるおそれの有無等の 判断  当該野生動植物等の種又は個体群の維持に支障を及ぼすおそれがあるか否かを判断する。
 なお、その宿主又は宿主の属する分類学上の種について我が国での長期間の使用等の経験がある遺伝子組換え生物等に関しては、当該宿主又は宿主の属する分類学上の種と比較して影響の程度が高まっているか否かにより判断することができる。


別表第四(第四関係)
1 生物多様性影響の評価に当たり収集した情報
第二の規定に従い収集した情報を別表第一に掲げられた項目に沿って記載する。その際、当該情報の出典(当該情報が学識経験者又は評価を行う者の有する知識又は経験に基づくものである場合は、その旨)が明らかになるように記載する。
2 項目ごとの生物多様性影響の評価
 別表第二に掲げられた評価の項目ごとに、別表第三に 定める生物多様性影響の評価の手順に従い実施した評価の内容を記載する。その際、評価を行うに当たり用いられた情報の出典(当該情報が学識経験者又は評価 を行う者の有する知識又は経験に基づくものである場合は、その旨)が明らかになるように記載する。また、評価を行う者が行った判断については、その判断の 根拠を明らかにする。
3 生物多様性影響の総合的評価
 2の項目ごとの評価結果の概要及びこれらの評価結果を踏まえた総合的な判断の結果を記載する。




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