バイオセーフティクリアリングハウス



遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第三条の規定に基づく基本的事項
(平成15年 財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・環境省告示第1号)
 現代のバイオテクノロジーが急速に拡大するとともに、現代のバイオテクノロジーが生物の多様性に及ぼす可能性のある悪影響についての懸念が増大してお り、安全上の措置が十分に執られた上で開発され及び利用されるならば現代のバイオテクノロジーは人類の福祉にとって多大な可能性を有するとの認識の下、遺 伝子組換え生物等に関し、特に国境を越える移動に着目した国際的な枠組みが必要
とされ、平成十二年一月に生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(以下「議定書」という。)が採択された。
 我が国では、遺伝子組換え生物等の使用等について、文部科学省、厚生労働省、農林水産省及び経済産業省がそれぞれ策定したガイドラインに基づき運用がな されてきたところであるが、遺伝子組換え生物等による生物多様性影響の防止に向けた国際的な取組の重要性にかんがみ、議定書の的確かつ円滑な実施を確保す ることを目的とした遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(以下「法」という。)を制定した。
 本事項は、法第三条の規定に基づき、議定書の的確かつ円滑な実施を図るため、必要な事項を定めるものである。
第一 遺伝子組換え生物等の使用等により生ずる影響であって、生物の多様性を損なうおそれのあるものを防止するための施策の実施に関する基本的な事項
1 遺伝子組換え生物等の第一種使用等に係る基本的な事項
 遺伝子組換え生物等を作成し又は輸入して第一種使用等をしようとする者その他の遺伝子組換え生物等の第一種使用等をしようとする者が、既に公表された第 一種使用規程に従った第一種使用等をする場合等を除き、受けなければならない第一種使用規程の承認に係る手続については、次によること。
(1) 第一種使用規程の承認の申請
イ 第一種使用規程の承認の申請に当たり提出すべき生物多様性影響評価書は、次に掲げる事項に留意して主務大臣が定める評価の方法に従って作成すること。
 @ 生物多様性影響の評価に際して着目すべき点は、遺伝子組換え生物等の特性によって様々であることから、植物(植物界に属する生物及び菌界に属する生 物のうちきのこ類をいう。)、動物(動物界に属する生物をいう。)及び微生物(菌界に属する生物(きのこ類を除く。)、原生生物界に属する生物、原核生物 界に属する生物、ウイルス及びウイロイドをいう。)ごとに評価の項目を定めること。
 A 生物多様性影響の評価に必要とされる情報は、最新の科学的知見によることとし、遺伝子組換え生物等の第一種使用等の目的、内容及び方法に応じ、当該遺伝子組換え生物等の宿主(法
第二条第二項第一号に掲げる技術の利用により得られた核酸又はその複製物が移入される生物をいう。以下同じ。)又は当該宿主の属する分類学上の種に関する情報、遺伝子組換え生物等の調製等に関する情報及び遺伝子組換え生物等の使用等に関する情報とすること。
 B 生物多様性影響の評価は、議定書附属書Vに規定された方法に沿って、影響を受ける可能性のある野生動植物等の特定、影響の具体的内容の評価、影響の生じやすさの評価、生物多様性影響が生じるおそれの有無等の判断の手順によること。
 C Aの遺伝子組換え生物等の使用等に関する情報には、必要に応じ、承認を受けようとする者による第一種使用等の開始後における情報収集、生物多様性影 響が生ずるおそれのある場合における生物多様性影響を防止するための措置、実験室等での使用等又は第一種使用等が予定されている環境と類似の環境での使用 等(原則として遺伝子組換え生物等の生活環又は世代時間に相応する適当な期間行われるものをいう。(2)ロAにおいて同じ。)の結果等を含むこと。
ロ 第一種使用規程の承認の申請に当たり申請書とともに提出する書類は、生物多様性影響評価書のほか、承認を受けようとする者による生物多様性影響の効果的な 防止に資する措置(当該承認を受けようとする者による第一種使用等の開始後における情報収集及び生物多様性影響が生ずるおそれのある場合における生物多様 性影響を防止するための措置を含む。(2)ロBにおいて同じ。)の内容を記載した書類とすること(主務大臣が必要と認める場合に限る。)。
(2) 第一種使用規程の承認の審査
イ 学識経験者からの意見聴取
 学識経験者については、第一種使用等をする遺伝子組換え生物等の特性に関し知見を有する専門家及び遺伝子組換え生物等の第一種使用等によって影響を受ける可能性のある生物、生態系等に関し知見を有する専門家から選定すること。
ロ 第一種使用規程の承認の基準
 第一種使用規程の承認の申請が次の@からBまでのいずれにも適合しているときは、生物多様性影響が生ずるおそれがないものとして、第一種使用規程の承認をするものとする。
 @ 当該第一種使用規程が、次のいずれかに該当するものであること。
  (イ) 生物多様性影響評価書及び学識経験者から聴取した意見の内容に照らし、当該第一種使用規程に従って第一種使用等をした場合に影響を受ける可能 性があると特定された野生動植物の種又は個体群の維持に支障を及ぼすおそれがないと認められる遺伝子組換え生物等に係る第一種使用規程であること。
  (ロ) その宿主又は宿主の属する分類学上の種について我が国での長期間の使用等の経験のある遺伝子組換え生物等であって、生物多様性影響評価書及び 学識経験者から聴取した意見の内容に照らし、当該宿主又は宿主の属する分類学上の種と比較して、生物多様性に及ぼす影響の程度が高まっていないと認められ るものに係る第一種使用規程であること。
 A 当該遺伝子組換え生物等の特性又はその第一種使用等の内容及び方法に応じ、実験室等での使用等又は第一種使用等が予定されている環境と類似の環境での使用等をすることにより、生物多様性影響を評価するための情報が得られていること。
 B 当該遺伝子組換え生物等の特性又はその第一種使用等の内容及び方法に応じ、生物多様性影響の評価に際し勘案した生物多様性影響の効果的な防止に資する措置が確実に講じられるものであること。
ハ 国民の意見の聴取
 遺伝子組換え生物等の使用等により生ずる生物多様性影響について国民各層の関心が高いことから、主務大臣は、第一種使用規程の承認に当たって、第一種使 用等の内容及び方法に応じ、国民に対し当該承認の申請に係る第一種使用規程等を公表し、それに対して提出された意見及び情報を考慮すること。
ニ 第一種使用規程の承認に当たって考慮すべき事項
 主務大臣は第一種使用規程の承認に当たって、遺伝子組換え生物等の第一種使用等による人の健康に対する影響を考慮するとともに、食品として国内で第一種 使用等をすることが第一種使用規程の承認申請書で示されているものにあっては、食品、添加物等の規格基準(昭和三十四年十二月厚生省告示第三百七十号)の 規定による安全性審査との整合性、飼料として国内で第一種使用等をすることが第一種使用規程の承認申請書で示されているものにあっては、飼料及び飼料添加 物の成分規格等に関する省令(昭和五十一年農林省令第三十五号)の規定による安全性についての確認との整合性を考慮すること。
(3) 承認取得者等による情報の収集等
イ 承認取得者は、生物多様性影響の評価に際し勘案した第一種使用等の開始後における情報収集及び生物多様性影響が生ずるおそれのある場合における生物多様性影響を防止するための措置を執る必要があること。
ロ 承認取得者は、主務大臣が法
第六条第二項の 規定に基づき必要な情報の提供を求めた場合に対応できるよう、第一種使用規程の承認を受けた遺伝子組換え生物等について、当該遺伝子組換え生物等の第一種 使用等をする者に対し、その第一種使用等の状況、第一種使用等により生ずる影響に関する情報の収集を求めることも含め、第一種使用等の状況、第一種使用等 により生ずる影響に関する情報の収集に努めること。
ハ 遺伝子組換え生物等の第一種使用等(環境への意図的な導入を目的とするものに限る。)をする者は、当該第一種使用等の状況を把握し、第一種使用等により生ずる影響に関する情報の収集に努めるとともに、必要に応じて関係する行政機関に連絡するよう努めること。
2 遺伝子組換え生物等の第二種使用等に係る基本的な事項
 遺伝子組換え生物等の第二種使用等に関し、執るべき拡散防止措置を主務省令により定める場合の考え方及び拡散防止措置の確認の手続については、次によること。
(1) 執るべき拡散防止措置を主務省令により定める場合の考え方
 主務大臣は、遺伝子組換え生物等の使用等の実績及び科学的知見を踏まえ、執るべき拡散防止措置をあらかじめ定めることができると判断される第二種使用等について定め、必要に応じ見直しを行うこと。
 その際、遺伝子組換え生物等の特性により生物多様性影響を生ずる可能性のある拡散の程度が異なることから、事業等の従事者への影響も考慮しつつ、執るべき拡散防止措置を拡散の程度に応じ段階に分けて定めること。
(2) 主務大臣による拡散防止措置の確認に係る手続
 主務大臣は、第二種使用等をしようとする遺伝子組換え生物等について、その特性及び使用等の態様に応じ、用いようとする施設等及び管理方法がその拡散を効果的に防止するものであることを確認すること。
3 遺伝子組換え生物等の輸出入に係る基本的な事項
(1) 遺伝子組換え生物等の輸入に係る手続等
 環境への意図的な導入を目的とした遺伝子組換え生物等の輸入に係る手続等については、次によること。
イ 権限のある当局
我が国の議定書における権限のある当局は、環境省であること。
ロ 輸入に係る通告の受領及び連絡
 環境大臣は、環境への意図的な導入を目的とした遺伝子組換え生物等の輸出について書面による通告を受領したときは、当該書面の写しを遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律施行規則(平成十五年財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省令第一号)第四十条第一項各号に定める大臣(環境大臣を除く。)に送付するとともに、当該書面に記載された輸入予定者に対し、通告があった旨及び法に基づく第一種使用規程の承認の必要の有無について連絡を行うこと。
ハ 輸入に係る通告者に対する通報
 環境大臣は、通告を受領した日から九十日以内に、議定書第九条2に掲げられた事項及び議定書第十条2に規定された情報を、当該通告をした者に対して書面により通報すること。その際、必要に応じ、予定される使用等に関連する他法令についての情報を提供すること。
ニ 輸入に係る通告に関する決定
 環境大臣は、通告を受領した日から二百七十日以内に、我が国における使用等に係る決定を、当該通告をした者及び議定書第二十条に規定するバイオセーフティに関する情報交換センター(以下「情報交換センター」という。)に対して書面により通報すること。なお、当該通告をした者に対する通報に際し、必要に応じ、予定される使用等に関連する他法令についての情報を提供すること。
(2) 遺伝子組換え生物等の輸出に係る手続
 遺伝子組換え生物等の輸出に係る手続については、次によること。
イ 輸入締約国の環境への意図的な導入を目的とする遺伝子組換え生物等の輸出について
 @ 輸出に係る通告
 遺伝子組換え生物等を議定書の締約国(以下「締約国」という。)に対し輸出しようとする者は、当該締約国の権限のある当局に対して、法第二十七条の規定に基づき書面により通告を行うこと。
 なお、当該締約国がいかなる遺伝子組換え生物等について通告を必要とするか、当該締約国の権限のある当局がどこであるか等については、情報交換センターの情報により判断すること。
 A 追加的な関連情報の提供
 締約国に通告を行った場合、当該締約国から追加的な関連情報を求められたときは、輸出しようとする者は、議定書の趣旨を踏まえ、必要な情報を提供すること。
 B 危険性の評価
 締約国に通告を行った場合、当該締約国から議定書第十五条2の規定に基づき危険性の評価の実施及びその費用の負担を求められたときは、輸出しようとする者は、議定書の趣旨を踏まえ、必要な対応を行うこと。
 C 輸入に係る締約国の意思の尊重
 締約国に通告を行った場合、輸出しようとする者は、当該締約国における輸入についての決定に従うこと。
 D 表示
 輸出しようとする者は、法第二十八条の規定に基づき必要な表示をした上で、輸出を行うこと。
 E 違法な輸出に対する措置
 主務大臣は、遺伝子組換え生物等の輸出が違法に行われた場合には、措置命令の適切な発動等を通じ、生物の多様性の確保を図ること。
 F 秘密情報の取扱い
 輸出しようとする者は、@に基づき通告した情報(議定書第二十一条6に 掲げる情報を除く。)又はAに基づき提供した追加的な関連情報であって、秘密のものとして取り扱われるべきものを特定することができること。この場合にお いて、輸入に係る締約国が要請するときは、当該締約国に対し、理由を示す必要があること。また、特定した情報であっても、議定書第二十一条2の規定に基づき、当該締約国が、そのような取扱いの対象としないと決定する場合もあることに留意すること。
ロ 食料若しくは飼料として直接利用し又は加工することを目的とする遺伝子組換え生物等の輸出について
 @ 輸入に係る締約国の意思の尊重
 輸出しようとする者は、輸入に係る締約国が議定書第十一条4の規定に基づき、当該締約国の国内規制の枠組みに従い、輸入に関する決定を行っている場合又は同条6の規定に基づき、情報交換センターを通じて危険性の評価等に従って輸入について決定することを宣言している場合については、これらの決定に従うこと。
 A 表示
 輸出しようとする者は、法第二十八条の規定に基づき必要な表示をした上で、輸出を行うこと。
 B 違法な輸出に対する措置
 主務大臣は、遺伝子組換え生物等の輸出が違法に行われた場合には、措置命令の適切な発動等を通じ、生物の多様性の確保を図ること。
ハ 拡散防止措置の下での利用を目的とする遺伝子組換え生物等の輸出について
 @ 表示
 輸出しようとする者は、法第二十八条の規定に基づき必要な表示をした上で、輸出を行うこと。
 A 違法な輸出に対する措置
 主務大臣は、遺伝子組換え生物等の輸出が違法に行われた場合には、措置命令の適切な発動等を通じ、生物の多様性の確保を図ること。
第二 遺伝子組換え生物等の使用等をする者がその行為を適正に行うために配慮しなければならない基本的な事項
1 他法令の遵守に関する事項
 遺伝子組換え生物等の使用等を行う者は、法の規定によるほか、人の健康の保護を図ることを目的とした法令等予定される使用等に関連する他法令を遵守すること。
2 遺伝子組換え生物等の取扱いに係る体制の整備に関する事項
 第一種使用規程(第一種使用等の場所を限定する等生物多様性影響を防止するために第一種使用等の方法を限定する場合に限る。4において同じ。)の承認を 受けようとする者又は第二種使用等をしようとする者は、遺伝子組換え生物等の使用等をする事業所等において生物多様性への影響を防止するための措置を適切 に行うことができるよう、遺伝子組換え生物等の特性及び使用等の態様に応じ、遺伝子組換え生物等の安全な取扱いについて検討する委員会等を設置し、第一種 使用規程の承認若しくは拡散防止措置の確認を受けるに当たり又は第二種使用等を行うに当たり、あらかじめ遺伝子組換え生物等の安全な取扱いについての検討 を行うとともに、遺伝子組換え生物等の取扱いについて経験を有する者の配置、遺伝子組換え生物等の取扱いに関する教育訓練、事故時における連絡体制の整備 を行うよう努めること。
3 情報の提供に関する事項
 譲渡者等は、譲受者等に対し、主務省令で定められる情報を提供する際、遺伝子組換え生物等の性状等に応じて、譲受者等が当該遺伝子組換え生物等を適切に取り扱うために提供することが望ましいと判断される情報を有する場合には、当該情報についても提供するよう努めること。
4 記録の保管に関する事項
 第一種使用規程の承認取得者及び第二種使用等をする者は、使用等の態様、2の委員会等における検討結果、譲渡等に際して提供した又は提供を受けた情報等を記録し、保管するよう努めること。
第三 その他遺伝子組換え生物等の使用等が適正に行われることを確保するための重要事項
1 科学的知見の充実のための措置に関する事項
 国は、遺伝子組換え生物等及びその使用等により生ずる生物多様性影響に関する科学的知見の充実を図るため、遺伝子組換え生物等の使用等による影響の監視を実施する等、これらに関する情報の収集、整理及び分析並びに研究の推進その他必要な措置を講ずるよう努めること。
2 情報の提供及び国民の意見の聴取に関する事項
 国は、法を的確に運用するため、承認を受けた第一種使用規程に関する情報、国外で使用等が認められている遺伝子組換え生物等に関する情報、生物多様性影 響についての新しい知見に関する情報等、遺伝子組換え生物等の使用等をする者にとって必要とされる情報を幅広く提供するよう努めること。
 また、国は、法に基づく施策に国民の意見を反映し、関係者相互間の情報及び意見の交換の促進を図るため、関係各省それぞれに蓄積される情報を集積し、提供するバイオセーフティに関する共通の情報基盤を整備し、情報提供を幅広く行い、広く国民の意見を求めること。 
3 秘密情報等に関する事項
 国は、情報の提供及び国民の意見の聴取に当たっては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定に基づき、第一種使 用規程の承認の申請をした者、使用等をする者等の秘密情報(秘密として管理されている事業活動又は研究活動に有用な技術上の情報であって公然と知られてい ないものをいう。)等の提供は行わないこと。
4 関係者相互間の連携に関する事項
 主務大臣は、法を的確に運用するため、2のバイオセーフティに関する共通の情報基盤を活用して、第一種使用規程の承認、拡散防止措置の確認等に関する情 報の共有化を図るとともに、相互の連絡をとることにより、遺伝子組換え生物等の使用等をする者等に対する指導等を円滑に行うこと。
5 国際協力に関する事項
 国は、開発途上締約国及び移行経済締約国における議定書の効果的な実施のため、議定書事務局の管理する専門家の名簿に専門家を登録すること等により、開 発途上国及び移行経済締約国における遺伝子組換え生物等の安全な使用等に関して知見を有する者の養成及び遺伝子組換え生物等の安全な使用等のための国内制 度の充実に協力すること。




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